「脳が同じ情報ばかり拾う理由」心理と仕組みをわかりやすく解説【RASと選択的注意】

最近、こんなふうに感じることはありませんか?

「なぜか、同じ話題ばかり目に入る」

「気にし始めたことが、やたら目に飛び込んでくる」

「転職を考えたとたん、“働き方”の話ばかり見かける」

まるで世の中が急に変わったかのように感じますが、実はそれ、世界が変わったのではなく「脳の見方」が変わっただけなのです。

この記事では、「なぜ脳は同じ情報ばかり拾ってしまうのか?」について、心理学や脳科学の視点からやさしく解説します。

脳がすべての情報を処理できない理由とは?

私たちは毎日、目や耳、肌を通して膨大な情報を受け取っています。

街の音
看板の文字
人の表情
スマートフォンの通知
…など

でも実際、私たちはそのすべてを平等に処理できてはいません。

もし一つひとつの情報に反応していたら、すぐに疲れ果ててしまいますよね。

そこで脳は、「自分にとって重要な情報だけを選んで処理する」という仕組みを持っています。

この仕組みのカギになるのが、「RAS」と「選択的注意」です。

RAS(網様体賦活系)とは?脳が情報を選ぶ仕組み

RASとは、脳幹にある神経ネットワークのこと。

以下のような、脳の土台となる大切な役割を持っています。

脳を起こしておく(覚醒レベルを保つ)
刺激に反応できるように整える
注意を向けやすくする

RASはよく「脳のフィルター」と表現されますが、もっと身近な例でいえば、ラジオの周波数を合わせる「チューニング機能」のようなものです。  

今の自分にとって大事な情報をキャッチしやすくするために、脳の受信状態を整えてくれるのです。

選択的注意とは?脳が必要な情報だけを拾う仕組み

もうひとつのカギが、「選択的注意(selective attention)」。

これは、自分にとって必要な情報に意識が集中し、それ以外の情報が意識にのぼりにくくなる現象です。

たとえば、騒がしい場所でも自分の名前だけは聞き取れる――そんな経験、ありますよね?

それが「カクテルパーティ効果」と呼ばれる現象で、脳が「自分の名前=重要」と判断して、処理の優先順位を上げているからなんです。

この選択的注意を支える土台として、RASが働いています。

なぜ同じ情報ばかり目に入る?脳の習性と心理的理由

一度気になりはじめたテーマが、なぜかあちこちに現れる。

実際には何も増えていないのに、急に世界が「その話題だらけ」に見えてしまう。

そんな現象の裏には、脳が「何に注意を向けるか」を自動的に選んでいる仕組みがあります。

ここからは、その仕組みの正体を詳しく見ていきましょう。

① 関心が「注意の基準」を変える

あるテーマに関心を持ち始めると、脳は「それに関する情報を見つけやすくなるモード」に切り替わります。

まるで、そのテーマに対してアンテナが立った状態になるようなものです。

② 意味づけが「重要度」を変える

以前はスルーしていた情報でも、「自分に関係がある」と感じた瞬間に、優先的に処理されるようになります。

とくに、自己関連性の高いものや、感情(期待・不安・喜び)が動くもの、目的・目標に関わる情報は、脳が「重要」と判断しやすくなります。

こうした情報は、脳が「大事」と判断して目に留まりやすくなるのです。

③ 頻度錯覚(バーダー・マインホフ現象)

「この言葉、一度聞いたらやたら見かけるようになった」そんなとき、脳で起きているのは「頻度錯覚」という現象です。

実際に情報が増えたのではなく、「それに気づく回数」が増えただけ。

つまり、RASと選択的注意が連携して、意識に上がる回数が増えた結果なんです。

④ 脳は本当に感度が上がる?神経科学でわかったこと

注意を向けた情報に対して、脳は本当に「感度」を上げて反応することがわかっています。

これは感覚的な表現や気のせいではなく、脳の働きを調べる研究によって確認されている現象です。

実際に、脳内のどの部分がどれくらい活動しているのかを観察できる脳画像研究(fMRIなど)があります。

これらの研究では、意識を集中させた対象に対して、視覚や聴覚などをつかさどる脳のエリアが、より活発に働くことが示されているのです。

一方で、今の自分に関係がないと判断された情報については、脳はあえて処理を抑え、意識に上がりにくくするように働きます。

つまり、注意を向けることで起きているのは、「よく見えるようになった気がする」という主観的な変化ではなく、脳の中で実際に起きている「選択的な強調と抑制」なのです。

思考のクセが脳の注意を操作する?その仕組みと影響

私たちの脳は、これまで何を考え続けてきたかによって、注意の向き先が決まってしまう傾向があります。

もし「どうせうまくいかない」と思っていたら、

うまくいかなかった出来事
否定的な反応
失敗の記憶

など、ネガティブな情報ばかりが自然と意識に上がりやすくなります。

それは、「悲観的だから失敗を見ている」のではなく、思考のクセが、脳の検索条件になっているからです。

ネガティブな思考が生まれる理由は、脳の仕組みとして説明できます👇

なぜ人はネガティブ思考に引きずられるのか?脳科学でわかる脳の仕組み

脳は注目したことしか覚えていない?記憶と注意の関係

私たちはふだん、「現実をそのまま見ている」と思いがちですが、実際にはそうではありません。

脳は目の前の出来事や状況を、すべてフラットに処理しているわけではなく、膨大な情報の中から「意味があると判断された一部」だけを意識にのぼらせているのです。

同じ出来事でも、人によって捉え方がまったく違うのは、まさにこの脳の働きが関係しています。

たとえば仕事でミスをしてしまったとき、

「またダメだった。私はやっぱりダメなんだ」と解釈する人もいれば、「前よりも冷静に対処できた。少しずつだけど前に進んでいる」と見る人もいます。

見ている現実は同じなのに、感じ方や心への影響はまったく違ってきますよね。

この違いを生み出しているのが、私たちの「思考のクセ」です。

どのような視点や思考パターンを持っているかによって、脳が「これは意味がある」と判断するポイントが変わってくるのです。

つまり、

私たちが現実をどう体験するか
何に注目し、何を見逃すか

その「解釈ルール」を作っているのは、思考のクセそのものなのです。

視点が変わると脳の反応も変わる?注意の幅が現実を決める

私たちは、毎日たくさんの情報を見聞きしていますが、すべてを均等に記憶しているわけではありません。

何が記憶に残るかは、実はそのとき「どこに注意が向いていたか」によって大きく左右されます。

脳は、注意を向けた情報を「大事なもの」と判断し、より強く処理しようとする傾向があります。

その結果、注意が向いていた内容は記憶に残りやすく、逆に注意が向いていなかった情報は、記憶にすら残らないのです。

たとえば、「どうせうまくいかない」と感じていると、

うまくいかなかったこと
責められたように感じた会話
否定的な反応や記憶

こういった情報を無意識に集め、覚えやすくなります。

一方で、助けてくれた人や小さな前進などのポジティブな出来事があったとしても、注意が向いていなければそれらは記憶に残らず、見過ごされてしまうのです。

注意を向けたことが記憶に残りやすくなり、それが思考の前提になっていく。

そうして「見たいものばかりが記憶に残る」というループが、知らないうちに私たちの思考を固定化させていくのです。

視点が変わると、見える情報も変わる

「同じ現実」なのに、ポジティブに受け取れる人とネガティブに捉える人がいますよね。

それは、持っている「視点」や「解釈のスタイル」によって、脳が向ける注意の方向性が変わるからです。

たとえば、

「私は前に進めていない」と思っていると、停滞や不足ばかりが目につき、「少しずつでも変化は起きている」と感じていると、小さな進歩や協力してくれた人の存在が見えてきます。

このように、視点が変わることで注意の向きが変わり、注意の向きが変わることで「見える現実」の内容も変わるのです。

大切なのは、これは「ポジティブに考えましょう」という単純な話ではないということ。

現実の中には、うまくいったことも、うまくいかなかったことも、両方存在しています。

視点を少し変えるだけで、今まで気づかなかった前向きな手がかりも捉えられるようになるのです。

おわりに:脳の仕組みを知ることは、自分にやさしくする第一歩

もし今までネガティブに物事を捉えやすかったとしても、それは「あなたの性格」ではなく、脳が学習してきた思考の習慣のあらわれです。

だからこそ、視点や注意の向け方を少しずつ変えていくことで、見える世界はちゃんと変わっていきます。

脳のしくみを知ることで、思考に振り回されずに、より穏やかに自分らしく生きるヒントが見えてきますよ。

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