RAS(網様体賦活系)とは?脳科学でわかる「イメージが行動を変える」仕組み
「現実を変えたい」「もっと自由に生きたい」――そう思っても、なかなか行動に移せない自分にモヤモヤしていませんか?
実はそれ、「意志が弱いから」ではありません。
脳には「予測可能な状態を保とうとする仕組み」があるため、新しいことを始めようとすると無意識にブレーキがかかるのです。
「じゃあ、どうやって変えていけばいいの?」という方、安心してください。
最新の脳科学では、実際に見たり体験したりしているときと、頭の中で具体的にイメージしているときとで、脳の中では共通する神経ネットワークが使われることがあるとわかっています。
そのため、私たちの感じ方や物事の捉え方は、想像している内容からも大きな影響を受けます。
つまり、「こんなふうに生きたい」「こんな自分でありたい」と具体的にイメージすることは、脳にとってその未来を「重要な方向性」として認識させる行為なのです。
その結果、注意や行動の向きが少しずつ整い、未来に向けた準備が始まります。
この記事では
なぜ脳はイメージを現実として受け取るのか?
RASという脳のフィルターが人生に与える影響
未来を変えるために今日からできる3つの習慣
について、わかりやすく解説します。
結論から言うと、イメージが直接現実を変えるわけではありません。
しかし、注意や行動の向きを変えることで、結果として現実の捉え方や選択が変わっていくのです。
脳科学でわかるイメージが行動に影響する理由

レモンを思い浮かべてみてください。
キュッとした酸味、つややかな皮、口の中に広がる刺激…。
今、口の中が少し酸っぱくなった気がしませんか?
これは、イメージだけでも、実際の体験と重なる脳の領域が反応することがある例です。
脳内では、視覚・味覚・唾液の分泌に関わる領域が実際に活性化します。
トップアスリートたちは、実際に体を動かす前に、頭の中でプレーを何度も繰り返す「イメージトレーニング」を取り入れていますよね。
体を動かさなくても、動きを具体的に思い描くことで、実際の運動と重なる脳の運動関連ネットワークが部分的に活動することが知られているからです。
そのため、イメージトレーニングは、動きや判断をスムーズにするための準備・補助的な手段として活用されています。
つまり私たちも、「こうなりたい」と鮮明にイメージすることによって、脳にとってその未来を意識しやすい方向性として共有し、行動に向かう準備を整えられるのです。
RAS(網様体賦活系)とは?脳のフィルターが注意を変える仕組み

では、どうしてイメージするだけで現実が動くようになるのでしょうか?
そのカギを握るのが、「RAS(網様体賦活系)」と呼ばれる脳のフィルター機能です。
RAS(網様体賦活系)とは?
RAS(網様体賦活系)は、脳幹にある神経ネットワークで、覚醒レベルや注意の向け先を調節する役割を担っています。
私たちは毎日、視覚・聴覚・触覚などを通じて、膨大な量の情報を受け取っています。
しかし、そのすべてを意識的に処理していたら、脳はすぐにパンクしちゃいますよね。
そこでRASは、
「今の自分にとって意味がある」「注意を向ける価値がある」刺激が、意識に上りやすくなるように、脳全体の状態を調整する
という働きをしています。
よく知られている例が、次のような体験です。
新しい車を買おうと決めた途端、同じ車種が街中でやたら目に入る
赤ちゃんが生まれたあと、子連れの人やベビーカーばかりが目につくようになる
これらは、実際に世界の中の情報量が増えたわけではなく、「注意が向く対象」が変わったことで、意識に上る情報が変化した結果と考えられています。
心理学では、こうした現象は「選択的注意」や「頻度錯覚(バーダー・マインホフ現象)」として説明され、RASはその土台となる覚醒・注意調整の神経基盤の一部を担っていると理解されています。
RASや選択的注意については、こちらで詳しく解説しています👇
RASが見たい現実を選ぶ仕組み
ここで大切なのは、RASが現実そのものを作り替えているわけではない、という点です。
RASが影響を与えるのは、
現実の中で「どの情報に気づきやすくなるか」
どの出来事を「意味のあるもの」として記憶に残しやすくなるか
という部分です。
たとえば、
「どうせ自分はうまくいかない」と考え続けていると
→ 失敗や否定的な出来事に注意が向きやすくなり
→ それが「やっぱりダメだ」という確信を強める材料として記憶されやすくなります。
一方で、
「自分は変われるかもしれない」「小さくても前に進める」と意識し続けていると
→ 成功例や前向きな変化、協力してくれる人などに気づきやすくなり
→ それが次の行動を後押しする情報として蓄積されていきます。
このように、
イメージや思考の方向性が、注意の向き先を変え、結果として「現実の捉え方」を変えていく
──これが、RASをめぐる説明として、現在の脳科学・心理学に沿った理解です。
脳科学に基づく|未来を変える3つの習慣

ここまで見てきたように、脳は「現実をそのまま受け取る装置」ではなく、注意や解釈のフィルターを通して世界を認識しています。
この仕組みをうまく使うことで、行動の選択や、日常で気づく情報の質を少しずつ変えていきたいですね。
ここでは、そのために取り入れやすい3つの実践方法をご紹介します。
①朝5分のビジュアライゼーション
朝起きたときに目を閉じて、「理想の1日」や「こうありたい自分の姿」を思い描いてみてください。
ポイントは、ただ漠然と考えるのではなく、五感を使って具体的にイメージすることです。
どんな服を着ているか
誰と、どんな会話をしているか
そのとき自分は、どんな気持ちで過ごしているか
このような体験に近いイメージを思い描くと、脳では実際の行動と重なる運動関連領域や感覚関連ネットワークが部分的に活動することが知られています。
その結果、「こういう状態は自分にとって重要だ」という前提が脳に共有され、注意や行動の方向性がそのイメージに沿いやすくなります。
② ポジティブな言葉を脳にインプットする
「ありがとう」
「今日もよく頑張ったね」
こうした短い言葉を、意識的に自分にかけてあげましょう。
脳の言語処理は、「誰に向けた言葉か」よりも、「どんな意味の言葉か」を重視して処理されると考えられています。
そのため、
自分に向けた言葉
他人に向けた言葉
心の中で繰り返している独り言
これらはすべて、脳にとっては同じように「意味のある情報」となるのです。
ネガティブな言葉を繰り返し浴びせ続ければ、脳はそれを前提条件として、注意や解釈を組み立ててしまいます。
逆に、肯定的で現実的な言葉を意識的に使うことで、脳が拾い上げる情報や、出来事の捉え方が少しずつ変わっていくのです。
③ 目標を「書き出す」ことで行動が変わる
「こうなりたい」
「こんな人生を送りたい」
その思いを、頭の中だけで考えるのではなく、文字として書き出し、目に見える形で残すことも効果的です。
書くという行為は、
情報を明確にする
抽象的な願望を具体的な言葉に落とし込む
脳にとって「重要な情報」として再認識させる
という働きを持っています。
こうして明確化された目標は、注意や覚醒を調整する神経システム(RASを含む)の影響を受けながら、日常の中で「関係のある情報」に気づきやすくなる土台になります。
その結果、
行動の選択肢が変わる
チャンスに気づきやすくなる
小さな一歩を踏み出しやすくなる
といった変化が起こりやすくなるのです。
イメージが行動を変え、行動が未来を変える

ここまで見てきたように、イメージや言葉、目標設定は、現実を直接変える魔法ではありません。
けれど、脳科学・心理学の視点で見ると、それらはすべて 「行動の前段階」を整える働きを持っています。
何に注意を向けるか
どんな情報を「重要」だと感じるか
どんな選択肢を取るか
こうした小さな変化が積み重なることで、行動が変わり、行動の積み重ねが未来を形づくっていきます。
多くの場合、未来が変わったと感じるとき、実際には「世界そのもの」が変わったのではなく、世界との関わり方が変わっているのです。
イメージは、その最初のきっかけにすぎません。
そして誰でも今日から扱える、現実的なツールだと言えるでしょう。
自分を責めない生き方へ

もし今、
うまくいかないことばかりに目がいく
自分には無理だという考えが頭から離れない
そんな状態にあるとしても、脳はただ、これまでの経験や言葉、思考のクセに基づいて、一貫性のある世界を見せているだけなのです。
ネガティブな思考が生まれる理由は、脳の仕組みとして説明できます👇
だからこそ、自分を責める必要はありません。
できるのは、少しずつ、やさしく、脳に与える情報の向きを変えていくことだけ。
ほんの5分、未来をイメージする
ひとこと、自分にねぎらいの言葉をかける
小さな目標を書き出してみる
その一つひとつが、「どうせ無理」ではなく「もしかしたら、できるかもしれない」という現実を脳に教えていきます。
未来は、突然大きく変わるものではありません。
今日、脳がどこを向いているかの積み重ねが、気づいたときに「違う景色」を連れてくるのです。


