朝5時20分アンコールワットへ|虹と霧と蝶の歓迎

カンボジア旅行3日目は、朝5時20分から始まりました。

まだ外は真っ暗です。

この日は、アンコールワットの日の出を見るために早朝から出発します。

希望者だけ参加する観光でしたが、もちろん行くことにしました。

せっかくここまで来たのだから、見られるものは見ておきたい。

5時20分でも、そこは迷いません。

車に乗り込み、暗いシェムリアップの町を走ります。

横を見ると、観光客を乗せたトゥクトゥクが何台も同じ方向へ進んでいました。

まだ夜のような時間なのに、みんなアンコールワットへ向かっています。

昨日は珍しくスコールが降ったそうで、道のところどころには水たまりが残っていました。

ソニーさんによると、4月にスコールが降るのは珍しく、

「今年は天気がおかしい」

とのこと。

そんな話を聞きながら、朝日を見に行きます。

世界中の人が同じ空を待っている

朝日を見るポイントに着くと、すでにたくさんの人が集まっていました。

世界中から来た人たちが、まだ暗い空を同じ方向に見上げていました。

まだ太陽は出ていません。

けれど、少しずつ空が明るくなっていきます。

さっきまで黒い影にしか見えなかったアンコールワットの輪郭が、少しずつ見えてくる。

建物そのものは動いていないのに、空の明るさが変わるだけで景色がどんどん変わっていきます。

普段なら、住んでいる国も、話す言葉も、毎日の暮らしも全部違う人たちです。

それがこの時間だけは、みんな同じ空を待っている。

考えてみれば、ちょっと面白い光景です。

そして、さらに空が明るくなったころようやく朝日が出てきました。

春分と秋分の日には、アンコールワットの一番高い塔の真後ろから朝日が昇るのだそうです。

それはきっと見事でしょう。

そしてたぶん、その日の人の多さもかなり見事でしょう。

一度見てみたい。

どのくらい人が集まるのかも少し見てみたい。

朝日を見たあと振り返ったら虹

朝日が出たので、これで終わりだと思いました。

ところが、反対側を見ると虹が出ています。

え、虹?

さっきまでみんなアンコールワットを見ていたのに、今度は反対側の空を見ています。

さらにそのあと、霧のような、雲のようなものが次々と立ち上がってきました。

朝日を見に来たはずなのに、見るものがどんどん増えていきます。

私はソニーさんに、

「いつもこんな感じなんですか?」

と聞いてみました。

すると、

「珍しいよ!」

とのこと。

それを聞くと、急に得した気分になります。

昨日はスコール。

今朝も少しぽつぽつする時間がありました。

旅行中の雨というと、できれば降らないでほしいものです。

でも、その雨があったから虹が出たのかもしれない。

霧のような景色も、その湿った空気があったから見られたのかもしれません。

そう考えると、その雨まで少しありがたくなってきます。

こんな天体ショーを見せてくれて、私はもう、

歓迎されていることにしよう。

と思いました。

旅先で見たものをどう受け取るかくらい、自分の好きに決めてもいい。

こんなに見たのにまだ朝

アンコールワットの日の出を見終えたあとは、いったんホテルへ戻りました。

これだけ見れば、もうかなり一日を過ごしたような気がします。

でも、まだ朝です。

ホテルで朝食を食べて少し休み、今度は8時半に再集合。

次に向かうのは、タ・プロームとバンテアイ・スレイです。

朝日を見て、虹まで見た。

それでも、まだ今日の観光は始まったばかり。

早起きすると、一日が長くてお得な気分になります。

旅先では特に、

「もうこんなにいろいろ見たのに、まだ午前中?」

ということがあります。

私は、この感じも嫌いではありません。

まだ見られる。

まだ行ける。

木と遺跡どちらが主役なのか

次に向かったタ・プロームは、写真で見たことがある人も多い場所です。

石造りの遺跡を、巨大な木の根が抱え込むように伸びています。

実際に目の前で見ると、

遺跡から木が生えているのか。

木の中に遺跡があるのか。

どちらが主役なのか、だんだん分からなくなってきます。

人が造った建物の上に種が落ち、そこから木が育ち、長い時間をかけて根が石の間へ入り込んでいく。

それでも遺跡は残っています。

木も残っています。

どちらかを取り除けばいいという単純な話でもないのでしょう。

木の根に押されて崩れそうな場所では修復も続いていて、外した石を元に戻せるよう番号まで振られていました。

何百年も前のものを、今も誰かが守っている。

遺跡は昔だけのものではないのだなと思いました。

写真を撮ろうとしたら手に蝶が止まった

そんなタ・プロームで、写真を撮ろうとスマホを構えたときのことです。

手に、蝶が止まりました。

え?

動いたら逃げそうです。

そのままじっとしていると、横にいた姉が何も言わず写真を撮りました。

私は、

「撮って」

とも、

「蝶が止まった」

とも言っていません。

でも、急に私が動かなくなったのを見て、何が起きているのか分かったようです。

こういうときは、姉妹で旅をしていると楽です。

長く一緒にいるので、説明しなくても通じることがあります。

もちろん、まったく通じないこともあります。

このときは完璧でした。

朝は虹。

今度は蝶。

だったらもう、

タ・プロームにも歓迎してもらったことにしよう。

ずいぶん手厚い歓迎です。

今度は赤い遺跡へ

タ・プロームの次は、バンテアイ・スレイへ向かいました。

ここは、それまで見てきた遺跡とは雰囲気がかなり違います。

まず、色が赤い。

そして彫刻がとても細かい。

「東洋のモナリザ」と呼ばれるレリーフがあることで知られていますが、そのほかの彫刻も、近くで見ると驚くほど細かく彫られています。

私はソニーさんに、

「これ、修復してあるんですか?」

と聞きました。

すると、当時のままだそうです。

本当に?

何百年も前に、これを?

道具だって今ほど便利ではなかったはずです。

どうやって彫ったのだろう。

どれくらい時間がかかったのだろう。

誰が作ったのだろう。

遺跡を見ていると、知りたいことが次々と出てきます。

いろいろ説明を聞いても、最後にはとても単純なところへ戻ります。

昔の人、すごい。

本当にすごいのだから仕方ありません。

朝日を見に行ったはずなのに

この日の予定を見れば、「アンコールワットの日の出を見る日」でした。

もちろん朝日も覚えています。

でも振り返ると、妙にくっきり残っているのは、そのあと振り返ったときに見えた虹だったりします。

タ・プロームと聞けば、巨大な木と一緒に、手に止まった蝶も思い出します。

こちらが決められるのは、「どこへ行くか」くらいなのかもしれません。

前日の雨も、朝の虹も、手に止まった蝶も、旅程表にはありませんでした。

でも、そういう予定外のものまで含めて、その日の景色になっていきます。

朝5時20分に見に行ったのは、アンコールワットの日の出。

そこから持ち帰ったのは、それだけではありませんでした。

海外旅行でスマホをたくさん使うなら

旅先では、地図を見たり写真を撮ったりと、スマホを使う時間が長くなります。

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